突撃!道産子アプリの開発環境 パート5 【 CTCAE 4.0 (英語・日本語JCOG版) 編】
はじめに
こんにちは!絶賛梅雨状態が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
北海道で生まれたアプリが、どのようにして作られているのかをご紹介していくこの企画。
第4回目の今回は、水口 貴史さん が開発した iOS アプリ CTCAE 有害事象共通用語規準 v4.0 JCOG版(英語・日本語)(以下 CTCAE 4.0 (英語・日本語JCOG版) )をご紹介します!
今回の記事では、アプリのウリや開発環境の他、薬剤師としてどのようなことを考えながらアプリを作成されているのか、伺うことができました。
では、さっそく行ってみましょう!
前回までの目次
突撃!道産子アプリの開発環境 パート1 【DOCOL 編】 | Developers.IO
突撃!道産子アプリの開発環境 パート2 【毎日がラーメン 編】
突撃!道産子アプリの開発環境 パート3 【ダブルマップ 編】
突撃!道産子アプリの開発環境 パート4 【FastEver 2 編】
iOSアプリ CTCAE 4.0 日本語JCOG版 とは
ここで、画面写真を交えて、具体的にアプリの内容を見ていきましょう。
また、以下リンクに解説が載っていますので、そちらも合わせてご参照ください。
【iPad対応】CTCAE 4 日本語訳JCOG版 アップデート | Guttyo lab
特徴1:CTCAE の内容を高速に閲覧・検索できる
CTCAEの内容が、項目別にまとまっています。
大抵2タップで、目的の項目にたどり着くことが出来るでしょう。
また、全文検索も可能です。
特徴2:原文をすぐにチェックできる
詳細項目を確認中、
画面上部真ん中にあるボタンをタップすることで、
原文と日本語JCOG版 (日本語訳) を行き来することが出来ます。
海外の文献をあたる時などに便利と思われます。
※ CTCAE とは
アメリカ National Cancer Institute の Cancer Therapy Evaluation Program が公表した、Common Terminology Criteria for Adverse Events (有害事象共通用語規準) の略称です。様々な疾病などの有害事象について、全世界で共通の尺度として広く使われています。別々の有害事象を扱う研究グループ同士のデータ比較等に活用されています。
CTCAE はネット上で、複数の形式のデータとして提供されています。これをJCOG (Japanese Clinical Oncology Group) が日本語に訳したものが、CTCAE 4.0 日本語訳JCOG版です。
デベロッパー紹介
今回のアプリを個人で開発されている、水口貴史さんにお話を伺うことが出来ました。水口さんは、アプリ制作とは全く違うお仕事をされています。
ー 水口さんの普段のお仕事について、教えてください。
水口さん(以下敬称略):
病院薬剤師をしています。
以前は病棟で患者さんに
抗がん薬などの服薬指導を行っておりましたが、
現在はICU(集中治療室)にて
急性期の患者
(例:意識が無く人工呼吸器や人工心肺の力を借りながら治療を行っている患者さん)
への薬物療法について医師と協議を行ったり、
医師や看護師などの医療従事者に対しての
医薬品に関する情報提供を行っています。
作者からのアプリ紹介
ー どのようなアプリか教えて下さい。
水口: 治療や処置に際して観察される、
あらゆる好ましくない意図しない徴候『有害事象(AE)』の
評価や報告に用いることができる
記述的用語集を閲覧するためのアプリです。
医療従事者の中でも
使う人が限られていると思われるマニアックなアプリです。
このアプリのウリ
ー CTCAE 4.0 (英語・日本語JCOG版) のココが便利!楽しい!という部分やウリを教えて下さい。
水口: 用語集の元ファイルは巨大なexcelファイルであり、
PCでの使用が前提とされています。
本アプリは iOS に特化することで
手軽に全文検索を可能にし、
閲覧性を高めました。
また、
よく閲覧する項目をお気に入りに登録することも可能ですので、
繰り返し確認する必要のある場合には便利だと思います。
開発ストーリーと開発環境
開発期間
ー ここまでの開発期間を教えて下さい。
水口: 開発期間はトータルで半年強といったところです。
企画は1週間、
フロントエンド作成に6ヶ月、
動作検証に1週間程度かけました。
一日の流れ
ー 開発日の標準的な一日の流れを教えて下さい。
水口: 本業終業後、
就寝までの時間や休日を使ってアプリ企画の構想を練ったり
コーディングを行っています。
開発モチベーションの維持
ー 本業と別で開発されていらっしゃいますが、アプリ完成までの、モチベーションを維持するための工夫などがありましたら教えて下さい。
水口: 自分が欲しいものを作ったときの達成感、
それに共感された時の充実感が
モチベーションの元です。
僕はアプリを考案するときには
同業者にも欲しいと思われている
という仮説を立てています。
仮説が実証されると気持ち良いですし、
未検証ですが
他人の業務効率改善といった好影響も
与えているのではないかと考えています。
今後は早くアプリの開発を終了できるよう、
様々な方法を考えていますし、
iOSアプリに限らず、
ITと医療を融合して
医療の質の向上に貢献する仕事を
していきたいと考えています。
技術的な工夫
ー 技術的に工夫された点を教えて下さい。
水口: 元データであるエクセルファイルを
プロパティリストへ変換し、
その中の重複や余分な記号などを取り除き、
画面に表示しています。
その際、
UITableViewにて読みやすいように
文字の大きさや行の高さなどを工夫しました。
開発で得られた知見
ー 開発の中で得られた知見を教えて下さい。
水口: まず、UIKitの基本的な使い方ですね。
そして、
NSPredicateの使用方法や、
Storyboardの使い方の
知見を得ることができました。
開発ツール
ー 開発ツールを教えて下さい。
水口: 主にこうしたツールを使っています。
開発体制
ー CTCAE 4.0 (英語・日本語JCOG版) の開発体制を教えて下さい。
水口: 企画、開発など必要なことは
全てひとりでおこなっています。
外部からの取材
ー ご自身のアプリ制作などについて、外部から取材を受けた・またはご自身で紹介している場所があれば、教えて下さい。
水口: 医療従事者が主な読者である業界誌や書籍に
取り上げていただいたことがあります。
楽しかった点・苦労した点
ー 開発していて楽しかったことを教えて下さい
水口: 実際に思うとおりに動いたときは素直に感動しました。
調剤電卓に引き続き 2番目のアプリであり、
思い浮かんだアイディアが形になったときは楽しいですね。
また、
本アプリを他の方が使用している場面を想像したときも
嬉しいです。
ー 逆に、開発していて、苦労した点を教えて下さい。
水口: 検索アルゴリズムの実装時に
DevSapのメンバーに
助けていただきました。
今後の構想
ー 今後の構想について教えてください。
水口: 現行のバージョンでは
iPhone6/6s Plus, iPad に対応いたしました。
iPad では大きな画面を活用し、
閲覧性の飛躍的な向上が期待できます。
また、
要望を戴いておりました
『日本語と英語の切り替え』も
ワンボタンで行えるようにしました。
今後はお気に入りに登録している項目を
iCloud で同期したり、
内部データベースの
オンラインアップデートが出来るよう
改良を加えていきたいと考えています。
最後に一言!
ー 最後に、この記事をご覧になっている皆さんに一言お願いします!
水口: 医学生・薬学生はじめ
医療・薬物治療に携わる方や
臨床研究、治験に関わる方には
ぜひ使っていただきたいアプリとなっています。
また、関係の無い方においても、
どのような有害事象(副作用など)が存在するのかを閲覧するだけでも
知見が広がるかも知れませんね。
ー ありがとうございました!
まとめ
インタビューを通して、第一線の現場で活躍されている、薬剤師・水口さんの、アプリに対する情熱が伝わってきました。
高く明確な目標があり、そこに向けてアプリを作っていく姿勢、大変尊敬していますし、私自身こうありたいと思いながら、この記事を編集していました。
道産子アプリシリーズ、次回もお楽しみに!
注記
- 本記事で紹介したCTCAE 有害事象共通用語規準 v4.0 JCOG版(英語・日本語)内のデータは、有害事象共通用語基準 v4.0 日本語訳JCOG版 より許諾を得て転載を行っているとのことです。